元銀行員エビエビのエビノート

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後悔しない住宅ローン(繰上返済はアリかナシか?)

後悔しない住宅ローンシリーズ。今回は、繰上返済についてです。繰上返済にはどんな種類があるのか、繰上返済の効果はどの程度なのか、解説していきたいと思います。

1.繰上返済とは

繰上返済とは、予定されていた返済計画よりも早く返済することを言います。繰上返済をした分、元金(借りているお金)が減るので、その分支払う利息を少なくすることができます。但し、繰上返済は必ずしも良いこととは限りません。繰上返済をし過ぎて生活資金が枯渇してしまえば元も子もないですし、繰上返済をすることでむしろ損してしまうケースさえあります。繰上返済が得か損か考えるにはまず、【住宅ローン減税】について知っておくことが不可欠です。

 2.住宅ローン減税

1)住宅ローン減税の概要

住宅ローン減税とは、借入から10年間※、年末時点で残っている住宅ローンの金額の1%が、所得税と住民税から引いてもらえる制度です。具体的には、所得税から控除し、控除しきれない分が住民税から控除されます。但し、住民税からの控除額は136,500円or前年所得の7%のいずれか低い方が上限となります。つまり、住宅ローン減税は年末時点の残高の1%が上限ですが、このすべてを享受できるかどうかは所得や住民税の額によって変わって来るということです。

※消費税10%で購入し、2020年12月31日までに居住した場合、13年間

 2)住宅ローン減税と繰上返済

繰上返済とは、住宅ローンの残高を予定よりも早く減らすことであるのに対し、住宅ローン減税は年末時点のローンの残高の1%を上限に、税金を減らしてくれる制度ですので、この住宅ローン減税があるがゆえに、繰上返済の利息削減効果が本来よりも薄くなっているのが現状です。

住宅ローン減税を加味して繰上返済が得か損か厳密に判断するには、実際に住宅ローン減税を受けられる額と、ローンの金利、さらには返戻保証料を加味して考える必要があり、中々に複雑です。例えば、年収600万円の場合、受けられる住宅ローン減税はせいぜい30万円程度となります。(実際には受けている保険料控除や住んでいる地域の住民税額など様々な要因によって変わります。)

3.繰上返済方法と効果

では次に、繰上返済によってどの程度、利息が削減できるのか、考えてみます。そのためにはまず、繰上返済の方法に【期間短縮型】と【返済額軽減型】の2つがあることを知っておく必要があります。

1)それぞれの繰上返済方法の概要

・期間短縮型:繰上返済した分、借入期間を短縮し、月々の返済額は変えない方法

・返済額軽減型は、月々の返済額を減らし、返済期間は変更しない方法

いずれにしても、元金が減る分、支払う利息を減らすことができます。

言葉だけだとイメージが沸きづらいと思いますので、簡単な例で見てみましょう。

【例】100万円を毎年10万円ずつ、10年で返済する計画で、2年目に10万円の繰上返済をした場合

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グラフの青が当初の計画どおり毎年10万円ずつ返済した場合の毎年の返済額を表しています。

赤と青は、2年目にプラス10万円、繰上返済した場合を表しています。

赤のグラフに着目すると、期間短縮型なので、9年で返済が完了していることがわかります。対して、返済額軽減型の青については、返済期間は10年のままですが、3年目以降の毎年の返済額が少し減っている(87,500円)ことがわかります。

2)繰上返済の効果

では、繰上返済の方法によって、どの程度支払う利息に影響がでてくるのか、具体例で見ていきましょう

【例】借入額:3000万円、借入期間:30年、金利:1%

 返済方法:元金均等(毎月返済)10年経過時点で500万円の繰上返済を行った場合

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結果を表にまとめると、上記のようになります。

繰上返済によって、最終的に支払う利息が期間短縮型なら877,078円、返済額軽減型なら502,084円削減されていることがわかります。このように、利息の削減効果は期間短縮型の方が大きくなります。対して、期間短縮型は月々の返済元金の額が83,333円と、繰上返済をしないケースと同額なのに対し、返済額軽減型では62,500円まで軽減されていることがわかります。

また、金利が高ければ高いほど、利息削減の効果は大きくなります。

4.繰上返済はありかなしか

厳密に繰上返済が得か損か判断するには、住宅ローン減税を加味し、さらに保証料があれば返戻保証料(最初にまとめて支払った保証料が繰上返済によって返ってくるもの)も考える必要があり、かなり複雑で難しいです。

ただ、個人的にはそこまで厳密に算定しなくとも、金利1%未満でローンを組んでいるなら、住宅ローン減税が受けられる当初10年間は無理に繰上返済をする必要はないと思います。返戻保証料まで考慮して仮に多少プラスになるとしても、それを上回る投資をすることはさほど難しいことではないですし、繰上返済をしてしまえばそのお金が返って来ることはありませんが、投資なら、いざという時には現金化することもできるので、そういった意味でも、無理に繰上返済するくらいなら、投資に回した方が良いと思います。

しかし、金利1%以上でローンを組んでいる場合には、返戻保証料も加味すると、それなりに美味しい投資と捉えることもできますので、手元資金に余裕があれば検討してみてもいいと思います。

◆まとめ◆

✔繰上返済とは、予定よりも早くローンを返済すること

⇒これにより、元金が減る=支払利息が削減できる

✔住宅ローン減税とは、年末の残高の1%を上限に、所得税・住民税を減らしてくれる制度

✔繰上返済の方法は2種類。【期間短縮型】と【返済額軽減型】

✔利息の削減効果は【期間短縮型】の方が大きい

✔厳密に繰上返済の損得を判断するのは困難。目安としては、住宅ローン控除期間の借入当初10年間は、金利1%未満なら不要、1%以上なら要検討