以前の記事でJ-REITの魅力について書きましたが、一口にJ-REITと言っても、どういった物件を保有しているかは千差万別であり、J-RET銘柄を選定する必要があります。そこで、銘柄選定にあたりポイントとなる視点について、初心者向けに解説していきたいと思います。今回はまず、J-REITがどのように分類できるのか解説していきたいと思います。
1.セクターについて
1)セクターの分類
J-REITは大きくオフィス、6つのセクターに分類され、それぞれ比率は以下のとおりです。
現状ではオフィスが全体の4割を占めています。また、近年はネット販売の普及に伴い物流施設が拡大基調にあるほか、まだまだ数としては少ないですが、高齢化に伴いヘルスケア(介護施設等)も徐々に増えてきています。
2)セクター別の特徴
上記で示したどのセクターに投資するかによって、配当利回りや価格の変動幅などに大きな違いが出てきます。それぞれのセクターの特徴は次のとおりです。
①オフィス
・全体の4割を占めるJ-REITの中心的存在
・法人をテナントとする。オフィスビルをイメージすればいいと思います
・テナントの契約期間が短いことから、景気変動の影響を受けやすい
→例えば、業績悪化により賃料が下げられたりすることで、配当利回りも下落するなど
②商業施設
・総合スーパーやショッピングモール
・オフィスに比べて契約期間が10~15年程度と、長いため、収益の見通しが立ちやすい
・但し、テナント賃料が売上高の○〇%と決められているケースもあるので、固定賃料がどの程度を占めているのかは要確認事項
・近年はネット販売の拡充により、敬遠されがちなセクター
③住宅
・居住用マンション
・景気変動の影響を受けづらい
・1テナントあたりの面積、賃料が低いため、退去があったときの影響も小さい
・単身者用は1テナントあたりの賃料が高く、ファミリータイプは転居リスクが小さい
④物流施設
・たくさんの商品を保管するための倉庫。注文に応じて倉庫から出荷する
・長期契約が多く、退去リスクも小さいため、収益は安定しやすい
・1テナントあたりの面積が大きく、かつテナント別の仕様に設計されていることも多いため、退去があったとき次のテナントが入るまで時間を要する可能性が高いため、退去による影響は大きい
・ネット販売の拡充に伴い、足元では買われやすいセクター
⑤ホテル
・景気変動の影響を受けやすい
・景気以外にも、災害等によるインバウンド需要の減退の影響を受けやすい
⑥ヘルスケア
・主に老人ホーム、介護施設
・施設毎の運営は専門性が高く、運営能力により収益が大きく異なる
→分析も難しい
2.投資法人の分類
1)投資対象セクターの違いによる分類
投資法人は、上記で分類したどのセクターの物件を投資対象とするかによって、分類されます。
①特化型
上記で示したいずれかのセクターの物件に特化した投資法人。セクターを分散しないので値動きは比較的大きくなる
例)日本ビルファンド投資法人(オフィス特化型)、日本プロロジストリート投資法人(物流施設特化型)等
②複合型
上記で示したセクターのうち、2つのセクターの物件に投資する(オフィス+住居等)投資法人。例えば、オフィスと住居を組み合わせることで、景気変動の影響を軽減できる
例)プレミア投資法人(オフィス+住居)等
③総合型
上記で示したセクターのうち、3つ以上のセクターの物件に投資する投資法人。複合型よりもさらにセクター分散が図られる
例)野村不動産マスターファンド投資法人、大和ハウスリート投資法人等
2)投資対象物件の所在地による分類
また、保有する不動産の所在地によっても分類されます。例えば、東京都心に特化した投資法人もあれば、地域分散を図っている投資法人もあります。全体の比率としては、やはりオフィスがJ-REITの4割を占めるため、必然的に東京の物件が多く、東京23区だけで取得価額ベースで全体の50%弱を占めています。