「後悔しない住宅ローン」シリーズです。今回は返済方法【元金均等返済】と【元利均等返済】についてです。住宅ローンを組む上で必ずこれらのうちどちらかを選択することになるのですが、実際にどの程度支払額が変わるのか、計算・予測して選択している方は意外と少ないのではないでしょうか。
この2つは金利種別(固定金利と変動金利)の選択にも密接に関わってきますので、後悔しないで住宅ローンを組むには必須かと思います。
1.ローンの返済とは
ローンはお金を借りるということなので、当然返していかなければいけません。毎月、借りたお金(元金)に利息を付けて返して行きます。この毎月の返済額(元金+利息)の決め方の種類が【元金均等返済】と【元利均等返済】です。
2.元金均等返済と元利均等返済の違い
1)元金均等返済と元利均等返済の概要
まず、それぞれの返済方法について簡単に説明すると
・元金均等返済:毎月一定の元金に利息を足した金額を返済していく方法
・元利均等返済:毎月支払う元金+利息の合計が一定になるように返済していく方法
となります。毎月の返済額は【①元金+②利息】となるわけですが、①を定額にするのが、元金均等返済、①+②を定額にするのが元利均等返済です。わかってしまえば言葉どおりです。
2)元金均等返済と元利均等返済で支払額はどうかわるのか?
言葉だけだと分かりづらいと思いますので、返済方法によって、実際の返済額、利息の支払額がどうかわるのか、簡単な例で見ていきましょう。
【例】借入額:1,000万円、借入期間:10年間、金利:5%、年1回返済
グラフ1-1と1-2はそれぞれの返済方法の時の毎年の返済額を示したグラフになっています。グラフ1-1のように、元金(青の棒)が一定になるように返済していくのが、元金均等返済であるのに対し、グラフ1-2のように、元金+利息(青+赤の棒)が一定になるように返済していくのが元利均等返済です。
次に、グラフ2を見てみましょう。これは元金がどう減っていくのか、元金均等と元利均等で比較したものになります。元利均等返済(赤)の方が元金の減るペースが遅いことがわかります。金利は借りている元金にかかってきますので、元金の減るペースが遅い=利息がその分多く必要、ということです。その結果、元金均等と元利均等で、最終的に支払う利息が200,457円、元利均等の場合の方が多くなっています。
また、最終的に支払う利息は元金均等の方が少なく済む一方で、借入当初の返済額が元利均等よりも多くなっていることがわかります。
それぞれの特徴をまとめると
元金均等返済:
①最終的に支払う利息が少なく済む(元金の減るペースが早い)
②借入当初の支払額が大きい
元利均等返済:
①最終的に支払う利息が多くなる(元金の減るペースが遅い)
②金利が変更されない限り、支払額が一定
という感じです。ここで、留意しておくべき2点に触れておきます。
まず、両返済方法の①についてですが、グラフの例ではわかり易くするため、金利を5%と高めに設定しているので10年間1,000万円借りただけで、最終的に支払う利息に20万円の差が出ていますが、現在は金利が非常に低いので、この差は少なくなっています。より現実的な住宅ローンの例で計算してみましょう。金利1%で、3,000万円を30年間借りたとすると、最終的な利息支払額の差は224,568円、元利均等返済の方が高くなります。30年間でこれしか差が出ないということです。
次に、元利均等返済の②についてです、この点について「毎月の支払額が一定なので計画が立てやすいですよ」という銀行員が多くいますが、変動金利で金利が変われば当然返済額も再計算されて変わりますので、これはミスリードだと思います。
3.変動金利と元利均等返済
元利均等返済には、【5年ルール】と【125%ルール】というものがあり、いずれも変動金利で金利が大幅上昇した時に、返済額が大幅に上昇するのを避けるためのものです。(上昇分が免除されるわけではなくあくまでも据え置かれるだけです。)これにより、変動金利を選択した方のほとんどの方が元利均等返済を選択している現状があります。この点については、別の記事であらためて解説したいと思います。